「親が元気なうちに遺言書を準備しておきたい」「将来、子どもたちが相続で揉めないようにしたい」と考える方が増えています。特に福岡市内に空き家や不動産を所有している場合、遺言書がないと相続人同士の分割協議が難航し、空き家が何年も放置されるケースも珍しくありません。
遺言書には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。自筆証書遺言は自分で書けるため費用がほとんどかかりませんが、形式不備で無効になるリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証役場で公証人が作成するため確実性が高い反面、財産額に応じて数万円から十数万円の費用がかかります。
どちらを選ぶべきかは、財産の内容、相続人の状況、費用対効果によって変わります。しかし、多くの解説記事は一般論にとどまり、「福岡市内のどこに行けばいいのか」「実際にいくらかかるのか」という具体的な情報が不足しています。
遺言書を準備することは、将来の空き家トラブルを防ぎ、家族に負担をかけないための最も確実な方法です。
- 遺言書がないと福岡市の空き家はどうなるか【実例で解説】
- 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべきかの判断基準
- 福岡市内の公証役場(天神・博多)の場所・予約方法・持参物
- 公正証書遺言の費用(財産額別シミュレーション)と専門家報酬
- 福岡法務局での自筆証書遺言保管制度の利用方法
遺言書がないと空き家はどうなる?【福岡市の実例から】
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が何を相続するかを決める必要があります。預貯金であれば分けやすいですが、空き家などの不動産は物理的に分割できないため、協議が難航しやすくなります。
福岡市内でも、遺言書がないことで空き家問題が深刻化したケースが数多く報告されています。実際の事例から、遺言書の重要性を確認しましょう。
もし遺言がなく協議が長引いて空き家が放置されると、税金や維持費の負担が激増する恐れがあります。福岡市での具体的なリスクについては「空き家の放置で税が最大6倍に?」をご覧ください。
実例①:兄弟3人で空き家の分割協議が紛糾

福岡市南区に住んでいたAさん(70代)が亡くなり、相続人は長男、次男、長女の3人でした。相続財産は南区内の自宅(築40年の木造戸建て)と預貯金300万円のみです。
長男は「自分が実家の近くに住んでいるから、自分が相続して管理する」と主張しました。しかし次男は「それなら代償金を払ってほしい。不動産の評価額は1,000万円あるはずだ」と反論しました。長女は「売却して3人で平等に分けたい」と提案しましたが、長男は「親の家を売るなんてできない」と感情的に拒否しました。
3人の意見はまとまらず、空き家は5年間放置されることになりました。
- 固定資産税は長男が立て替え(年間6万円×5年=30万円)
- 次男と長女は「自分は相続していないから払う義務はない」と負担拒否
- 兄弟間の関係が悪化
- 最終的に弁護士を介した調停に発展
もしAさんが遺言書で「自宅は長男に相続させる。ただし、次男と長女にそれぞれ150万円ずつ代償金を支払うこと」と明記していれば、このような紛争は避けられた可能性が高いです。




3人兄弟、姉妹などでよくあるパターンです。遺産協議の中ではシンプルなパターンではありますが、実際は中々面倒なケースに発展することが多く、最終的に弁護士任せになることも…
実例②:相続人が多すぎて全員の合意が取れない

福岡市東区のBさん(80代・女性)には子どもがおらず、配偶者もすでに他界していました。相続人は、Bさんの兄弟姉妹4人とその代襲相続人(甥・姪)合わせて8人になりました。
Bさんが残した財産は東区内の自宅(築50年)のみで、預貯金はほとんどありませんでした。相続人8人全員の合意がなければ不動産の名義変更はできませんが、そのうち2人とは数十年音信不通の状態でした。
- 連絡先を調べるだけで数か月かかった
- 連絡がついても「自分には関係ない」「手続きが面倒だ」と非協力的
- 遺産分割協議の成立まで3年以上かかった
- 近隣から「草木が伸びて迷惑」「不審者が出入りしている」と苦情
- 行政から改善指導を受ける事態に
もしBさんが遺言書で「全財産を甥のCに遺贈する」と指定していれば、Cが単独で相続し、速やかに不動産の処分や活用ができたはずです。子どもがいない夫婦の場合、遺言書の重要性は特に高くなります。




ここまで来ると相続の関係図を書くなどしない限り、内容さえよく分かりません。しかし、兄弟姉妹が4人も5人もいる場合は、こういったケースも起こり得ます。
相続の知見がある人ならともかく、普通は相続の分配を理解することさえ難しいです。
遺言書で防げる空き家トラブル

これらの実例から分かるように、遺言書があれば多くの空き家トラブルを未然に防ぐことができます。
①不動産の相続人を明確に指定できる
「自宅は長男に相続させる」「土地は次男に相続させる」など、具体的に指定することで分割協議の必要がなくなります。相続人が複数いる場合でも、遺言書で指定された人が単独で名義変更できるため、手続きがスムーズに進みます。
②換価分割の指示ができる
換価分割とは、不動産を売却して現金化し、相続人で分配する方法です。遺言書に「自宅を売却し、その代金を相続人で均等に分けること」と記載しておけば、誰も住む予定のない空き家を速やかに処分できます。
不動産を売却(換価分割)する前には家財の整理が必要です。検討している方は、「不用品回収業者の選び方」をご覧ください。
③遺言執行者を指定できる
遺言執行者は遺言の内容を実現する権限を持ち、相続人全員の合意なしに不動産の売却や名義変更を進められます。司法書士や弁護士などの専門家を遺言執行者に指定しておけば、相続人間の感情的な対立を避けながら、円滑に手続きを完了できます。
④相続放棄の判断材料を残せる
遺言書は、相続放棄や負動産問題の事前対策にもなります。「この不動産は価値が低く、相続人に負担をかける可能性がある。相続放棄も検討してほしい」といったメッセージを付言事項として記載しておけば、相続人が冷静に判断する助けになります。
相続放棄を検討している方は「準備やトラブル回避」についてをご覧ください。また、負動産を相続してしまいそうだという方は事前に「相続放棄の注意点と空き家特例」をご覧ください。
公正証書遺言とは?【制度の仕組みと法的効力】
公正証書遺言は、公証人法に基づいて公証役場で作成される遺言書です。自筆証書遺言が遺言者本人が全文を自筆で書くのに対し、公正証書遺言は公証人が遺言者の口述をもとに作成し、法律的に有効な形式に整えます。
ここでは制度の法的性質と仕組みを正確に理解しておきましょう。
公正証書遺言の法的性質
公正証書遺言は公証人法に基づく公文書として作成されます。公文書とは、公務員がその職務上作成する文書のことで、私文書である自筆証書遺言よりも高い証明力を持ちます。
公証人は法務大臣が任命する公務員であり、裁判官や検察官などの法律実務経験者から選任されます。公証人は遺言者の真意を確認し、法律的に有効な内容となるよう助言しながら遺言書を作成します。
- 原本:公証役場で永久保管(紛失・改ざんのリスクなし)
- 正本:遺言者に交付(相続手続きで使用)
- 謄本:遺言者に交付(予備として保管)
原本が公証役場に保管されているため、相続人は全国の公証役場で遺言書の有無を検索できます。これを遺言検索制度といい、遺言者の死亡後、相続人であることを証明する戸籍謄本などを持参すれば、どこの公証役場で遺言書が作成されたかを確認できます。
作成に必要な要件

公正証書遺言を作成するには、いくつかの法的要件を満たす必要がありますので、軽く把握しておいてください。
①遺言者本人の意思確認
公証人は遺言者と面談し、遺言内容が本人の真意であることを確認します。認知症などで判断能力が低下している場合、公正証書遺言の作成は困難になります。そのため、判断能力が十分にあるうちに作成することが重要です。
②証人2名の立ち会い
証人は遺言の作成過程を見届け、遺言者の意思確認が適切に行われたことを証明する役割を果たします。
- 未成年者は証人になれない
- 推定相続人は証人になれない
- 受遺者、その配偶者および直系血族は証人になれない
実務的には、司法書士や行政書士などの専門家に証人を依頼するケースが多くなっています。
③公証人による読み聞かせ
公証人は作成した遺言書の内容を遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させて、内容に誤りがないことを確認します。この過程で、遺言者は内容の修正を求めることもできます。
④署名押印
遺言者、証人、公証人の全員が署名押印します。遺言者は実印を使用し、印鑑証明書を提出します。これにより、本人確認と意思確認が厳格に行われたことが記録されます。
公正証書遺言の法的効力
公正証書遺言には、自筆証書遺言にはない強力な法的効力があります。特に覚えておきたいのが以下の4点です。
①検認手続きが不要
自筆証書遺言の場合、相続発生後に家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。検認とは、遺言書の存在と内容を相続人に知らせ、偽造や変造を防ぐための手続きです。検認には1か月から2か月程度かかり、その間は遺言書を使った相続手続きができません。
しかし、公正証書遺言は公証人が作成し原本を保管しているため、偽造や変造の恐れがなく、検認手続きは不要です。相続発生後すぐに、公正証書遺言の正本または謄本を使って不動産の名義変更や預貯金の解約手続きを進められます。
②形式不備による無効のリスクがほぼゼロ
自筆証書遺言は、日付の記載漏れ、押印忘れ、訂正方法の誤りなど、形式的な不備で無効になることがあります。しかし、公正証書遺言は法律の専門家である公証人が作成するため、形式不備で無効になることはほとんどありません。
③遺言執行の際の信頼性が高い
金融機関や法務局は、公正証書遺言であれば内容を信頼して手続きを進めてくれます。一方、自筆証書遺言の場合は、内容が不明確だったり、本人の筆跡に疑義が生じたりすると、手続きが滞ることがあります。
④紛失や改ざんのリスクがない
自筆証書遺言は自宅で保管することが多く、相続人が遺言書を発見できない、または一部の相続人が隠匿・破棄するリスクがあります。公正証書遺言の原本は公証役場で永久保管されるため、このようなリスクは一切ありません。
- 原本は公証役場が永久保管
- 全国の公証役場で検索可能
- 相続人による隠匿・破棄の心配なし
- 正本を紛失しても謄本で手続き可能
遺言書作成は相続準備の第一歩です。その後の名義変更や税務申告など、福岡市での相続手続き全体の流れは「相続手続き完全ガイド」でチェックできます。
自筆証書遺言vs公正証書遺言【どちらを選ぶべきか】
遺言書には主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。どちらを選ぶべきかは、財産の内容、相続人の状況、費用対効果によって変わります。ここでは、それぞれの特徴を比較しながら、判断基準を提示します。
自筆証書遺言:自分で書く方法
自筆証書遺言は、遺言者が全文を自分で書いて作成する遺言書です。民法で定められた要件を満たせば、いつでも自由に作成できます。
作成の要件
- 全文を自筆で書く(パソコン・代筆は不可)
- 日付を明記する(令和○年○月○日)
- 氏名を自筆で書く
- 押印する(実印が望ましい)
ただし、財産目録のみはパソコンで作成可能です。その場合、財産目録の各ページに署名押印が必要になります。
費用
基本的に無料で作成できます。ただし、法務局の保管制度を利用する場合は3,900円の手数料がかかります。
メリットとデメリット
自筆証書遺言を検討している場合は、以下のメリット・デメリットを把握した上で書くようにしてください。
- いつでも気軽に書ける
- 費用がほとんどかからない
- 誰にも知らずに作成できる
- 内容の変更・撤回が自由
- 形式不備で無効になるリスク
- 内容が曖昧だと紛争の原因に
- 自宅保管だと紛失・改ざんの恐れ
- 相続発生後に検認手続きが必要(法務局保管を除く)
法務局の保管制度を利用すれば、紛失や改ざんのリスクは避けられますが、形式不備のリスクは残ります。
公正証書遺言:公証役場で作る方法
公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述をもとに作成する遺言書です。前述の通り、法的効力が高く確実性に優れています。
作成の流れ
電話で予約し、遺言の内容を大まかに伝えます。
戸籍謄本、印鑑証明書、不動産の登記事項証明書などを準備します。
専門家(司法書士・行政書士)に依頼するのが一般的です。
公証人が遺言書を読み上げ、内容を確認して署名押印します。
費用
財産額に応じて数万円から十数万円の手数料がかかります。詳しい費用については後述します。
メリットとデメリット
- 形式不備のリスクがほぼゼロ
- 原本を公証役場が永久保管
- 検認手続きが不要
- 金融機関や法務局での信頼性が高い
- 形式不備で無効になるリスク
- 内容が曖昧だと紛争の原因に
- 自宅保管だと紛失・改ざんの恐れ
- 相続発生後に検認手続きが必要(法務局保管を除く)
どちらを選ぶべきか?判断フローチャート
どちらのほうが良いのか分からない…と悩んでいる方は以下の判断基準を参考に、自分の状況に合った方法を選んでください。
公正証書遺言を選ぶべきケース
- 財産が複雑(不動産が複数、株式や事業資産がある)
- 財産総額が3,000万円以上
- 相続人が多い、または関係が複雑
- 相続争いが予想される
- 確実性を最優先したい
特に、福岡市内に複数の不動産を所有している場合や、事業を営んでいる場合は公正証書遺言が適しています。
自筆証書遺言を選んでもよいケース
- 財産がシンプル(自宅と預貯金のみ)
- 相続人が配偶者と子のみで関係良好
- 遺言内容が明確で争いの余地がない
- 費用を抑えたい
ただし、自筆証書遺言を選ぶ場合でも、法務局の保管制度を必ず利用することをおすすめします。また、専門家に内容を確認してもらうことで、形式不備や内容の曖昧さを防げます。
迷ったら公正証書遺言を選ぶ
判断に迷う場合は、公正証書遺言を選ぶことをおすすめします。費用は数万円から十数万円かかりますが、将来の相続トラブルを防ぐコストと考えれば、決して高くはありません。
相続トラブルが発生して弁護士に依頼すると、数十万円から数百万円の費用がかかります。事前に公正証書遺言を作成しておけば、この費用を回避できます。
福岡市内の公証役場はどこ?【場所・予約方法・持参物】

公正証書遺言を作成すると決めたら、次に知りたいのが「福岡市内のどこに行けばいいのか」という具体的な情報です。
福岡市内には2つの公証役場があり、どちらでも遺言書の作成が可能です。ここでは、各公証役場の場所、アクセス、予約方法、持参すべき書類を詳しく解説します。
福岡公証役場(天神エリア)
天神が近い方は福岡公証役場が行きやすくなっています。天神駅からすぐなので、年配の方でも不安なく歩ける距離です。
所在地・アクセス
- 所在地:福岡市中央区天神1丁目13-17 福岡天神第一生命ビル8階
- 電話番号:092-781-5087
- 受付時間:平日9時00分~17時00分(土日祝日は休み)
- アクセス:地下鉄空港線天神駅から徒歩5分、西鉄福岡(天神)駅から徒歩3分
天神の中心部に位置し、公共交通機関でのアクセスが非常に便利です。近隣にコインパーキングもありますが、公共交通機関の利用をおすすめします。
予約や最新情報は公式サイトで確認してください。公証役場の電話番号や受付時間は変更される場合があります。
博多公証役場(博多駅エリア)
博多にも交渉役場があり、こちらも博多口を出てすぐの場所にあります。
所在地・アクセス
- 所在地:福岡市博多区博多駅前3丁目2-8 住友生命博多ビル6階
- 電話番号:092-474-8269
- 受付時間:平日9時00分~17時00分(土日祝日は休み)
- アクセス:JR博多駅博多口から徒歩5分、地下鉄空港線博多駅から徒歩3分
JR博多駅から近く、新幹線や在来線を利用する方にとってアクセスしやすい立地です。博多駅周辺は駐車場も多く、車での来訪も可能です。予約や最新情報は公式サイトで確認してください。
公式サイト:↗日本公証人連合会 福岡県公証人会
予約の流れと必要な準備
公正証書遺言の作成には事前予約が必要です。以下の流れで進めます。
公証役場に電話し、遺言書を作成したい旨を伝えます。受付時間は平日9時~17時です。初回相談は無料で、所要時間は30分から1時間程度です。
公証人と面談し、遺言の内容を伝えます。財産の内容、相続人の関係、遺言で実現したいことなどを具体的に説明してください。公証人が法的に有効な内容になるよう助言してくれます。
公証人から指示された書類を準備します。書類の取得には1週間程度かかることもあるため、余裕を持って準備してください。
遺言書の作成日を予約します。証人2名の手配も必要です。専門家(司法書士・行政書士)に依頼する場合は、公証役場が紹介してくれることもあります。
予約日に公証役場を訪問し、遺言書を作成します。所要時間は1時間程度です。公証人が遺言書を読み上げ、内容を確認した後、遺言者・証人・公証人が署名押印します。その場で正本と謄本が交付されます。
持参する書類一覧
公正証書遺言の作成には、以下の書類が必要です。事前に準備しておくとスムーズに手続きが進みます。
遺言者本人が準備する書類
- 印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)
- 実印
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 戸籍謄本(相続人を確認するため)
財産に関する書類
- 不動産の登記事項証明書(法務局で取得)
- 不動産の固定資産評価証明書(区役所で取得)
- 預貯金通帳のコピー(金融機関名・支店名・口座番号が分かるもの)
- 株式や有価証券がある場合は証券会社の残高証明書
受遺者(相続人以外に遺贈する場合)の書類
- 受遺者の住民票
証人2名の書類
- 証人2名の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
書類に不備があると作成日を延期せざるを得ないため、事前相談の際に必要書類のリストを公証人に確認しておくことをおすすめします。
公正証書遺言の費用はいくら?【財産額別の具体例】

公正証書遺言の作成には、公証役場への手数料と、専門家に依頼する場合の報酬が必要です。
手数料は財産額によって決まるため、事前に自分のケースでいくらかかるのかを把握しておくことが重要です。ここでは、福岡市の典型的なケースをもとに、具体的な費用を試算します。
※専門家報酬は人によって違うのであくまで目安になります。
公証役場の手数料表(財産額別)
公証役場の手数料は、公証人手数料令という政令で全国一律に定められています。遺言書に記載する財産ごとに手数料が計算され、合算した金額が総額となります。
- 100万円以下:5,000円
- 200万円以下:7,000円
- 500万円以下:11,000円
- 1,000万円以下:17,000円
- 3,000万円以下:23,000円
- 5,000万円以下:29,000円
- 1億円以下:43,000円
- 1億円超:43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円加算
また、遺言書全体の財産総額が1億円以下の場合、遺言加算として11,000円が別途加算されます。
たとえば、自宅(評価額2,000万円)と預貯金(500万円)を相続させる場合、自宅で23,000円、預貯金で11,000円、遺言加算で11,000円となり、合計45,000円の手数料がかかります。
福岡市の典型的なケースでの費用試算
福岡市内でよくあるケースをもとに、具体的な費用を試算してみましょう。
ケース①:自宅+預貯金(財産総額2,500万円)
- 自宅(福岡市南区、評価額2,000万円)→23,000円
- 預貯金(500万円)→11,000円
- 遺言加算→11,000円
- 合計:45,000円
このケースでは、公証役場への手数料は約45,000円となります。
ケース②:自宅+預貯金+株式(財産総額4,500万円)
- 自宅(福岡市中央区、評価額3,000万円)→23,000円
- 預貯金(1,000万円)→17,000円
- 株式(500万円)→11,000円
- 遺言加算→11,000円
- 合計:62,000円
財産が複数ある場合、それぞれに手数料がかかるため、総額はやや高くなります。とはいえ、財産の金額に対して考えるとかなり割安だと思います。
ケース③:複数の不動産+預貯金(財産総額8,000万円)
- 自宅(評価額3,500万円)→29,000円
- 賃貸マンション(評価額3,000万円)→23,000円
- 預貯金(1,500万円)→17,000円
- 遺言加算→11,000円
- 合計:80,000円
不動産が複数ある場合は、それぞれ個別に手数料が計算されます。とはいえ、こちらもかなり割安なので、財産が多い方は作成しておくに越したことはありません。
専門家に依頼する場合の追加費用
遺言書の原案作成や証人の手配を専門家に依頼する場合、別途報酬が発生します。専門家の種類によって費用が異なります。
司法書士に依頼する場合
- 原案作:5万円~10万円
- 証人2名の手配:1名あたり1万円~
- 公証役場との調整:報酬に含まれることが多い
司法書士は相続登記も専門としているため、遺言書作成と将来の相続登記をセットで依頼できます。
行政書士に依頼する場合
- 原案作成:5万円~8万円
- 証人2名の手配:1名あたり1万円~
- 公証役場への同行サポート:報酬に含まれることが多い
行政書士は書類作成の専門家で、遺言書の原案作成に強みがあります。
弁護士に依頼する場合
- 原案作成:10万円~20万円
- 証人2名の手配:報酬に含まれることが多い
- 紛争予防の法的アドバイス:報酬に含まれる
弁護士は法律全般の専門家で、相続争いが予想される複雑なケースに適しています。
総額の目安
- 自分で準備する場合:5万円~10万円(公証役場手数料のみ)
- 司法書士・行政書士に依頼:15万円~20万円
- 弁護士に依頼:20万円~30万円
自分で作る vs 専門家に依頼する判断基準
費用を抑えたい場合、自分で書類を準備して公証役場に直接依頼することも可能です。ただし、専門家に依頼することで得られるメリットも大きいため、状況に応じて判断してください。
自分で作れるケース
以下のケースは自分で作っても比較的問題になることは少ないはずです。
- 相続人が配偶者と子のみで関係良好
- 財産がシンプル(自宅+預貯金程度)
- 遺言内容が明確
- 書類の取得や手続きに時間を割ける
専門家に依頼すべきケース
逆に以下のケースは専門家に依頼しないと、後々問題になることは多いため、早めのご相談をおすすめします。
- 相続人が多い、または関係が複雑
- 不動産が複数ある
- 事業承継や株式が絡む
- 遺留分への配慮が必要
- 相続争いが予想される
費用対効果の考え方
専門家への報酬として10万円を支払うことで、将来の相続トラブルを防げるなら、決して高い投資ではありません。
相続トラブルが発生して弁護士に依頼すると、着手金だけで数十万円、最終的には数百万円の費用がかかることもあります。事前に公正証書遺言を作成しておけば、この費用を回避できます。
自筆証書遺言を福岡で作る場合の注意点
費用を抑えたい場合や、まずは気軽に遺言書を作成したい場合は、自筆証書遺言も選択肢の一つです。
ただし、自筆証書遺言には形式不備で無効になるリスクがあります。ここでは、福岡で自筆証書遺言を作成する際の注意点と、法務局の保管制度について解説します。
自筆証書遺言の書き方(最低限のルール)
自筆証書遺言は、民法で定められた要件を満たさなければ無効になります。以下のルールは必ず守ってください。
①全文を自筆で書く
遺言書の本文は、すべて自分の手で書く必要があります。パソコンやワープロで作成したもの、他人に代筆してもらったものは無効です。
ただし、財産目録のみはパソコンで作成可能です。その場合、財産目録の各ページに署名押印が必要になります。
②日付を明記する
「令和〇年〇月〇日」のように、年月日を特定できる形で記載してください。「令和7年1月吉日」のような曖昧な表記は無効です。
③氏名を自筆で書く
氏名も必ず自筆で書いてください。印鑑だけで氏名の記載がない場合は無効になります。
④押印する
遺言書には押印が必要です。実印が望ましいですが、認印でも法律上は有効です。ただし、後日の紛争を防ぐためには実印を使用することをおすすめします。
⑤訂正方法にもルールがある
遺言書を訂正する場合は、訂正箇所に二重線を引き、訂正印を押し、欄外に「○字削除、○字加入」と記載する必要があります。訂正方法を誤ると、訂正部分が無効になることがあります。
- 日付の記載がなかった
- 押印を忘れていた
- パソコンで全文を作成していた
- 訂正方法が間違っていて内容が不明確になった
法務局の保管制度を利用する(福岡法務局)
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。この制度を利用することで、紛失や改ざんのリスクを防ぎ、検認手続きも不要になります。
制度の概要
- 費用:3,900円(1通)
- 保管場所:遺言者の住所地・本籍地・所有不動産所在地を管轄する法務局
- 手続き:遺言者本人が法務局に出向いて申請(代理人不可)
保管制度のメリット
- 紛失・改ざんの心配がない
- 相続発生後の検認手続きが不要
- 相続人への通知サービスあり
- 全国の法務局で遺言書の有無を検索可能
福岡法務局での手続き
福岡市在住の方は、福岡法務局本局または福岡法務局博多出張所で手続きができます。
- 所在地:福岡市中央区舞鶴3丁目5-25
- 電話番号:092-721-4570
- アクセス:地下鉄空港線赤坂駅から徒歩7分
手続きには予約が必要です。法務局のホームページから予約システムにアクセスし、事前に予約してください。
自筆でも専門家のチェックを受けるべき理由
自筆証書遺言は自分で作成できますが、形式不備や内容の曖昧さで無効になるリスクがあります。
よくある問題点
- 財産の特定が不十分(「自宅}とだけ書いて住所や地番の記載がない)
- 相続人の特定が曖昧(「長男」とだけ書いて氏名の記載がない)
- 内容が抽象的で解釈が分かれる
- 遺留分への配慮がなく、後日紛争になる
専門家のチェックを受けるメリット
司法書士や行政書士に2万円から5万円程度で内容を確認してもらうことで、これらの問題を事前に防げます。公正証書遺言よりは安く、自分で作成する手軽さも残しながら、確実性を高められます。
特に、不動産が複数ある場合や、相続人が多い場合は、専門家のチェックを受けることを強くおすすめします。
福岡市内の相談先
- 福岡県司法書士会:無料相談会を定期的に実施
- 福岡県行政書士会:遺言書作成の相談窓口あり
- 福岡市各区役所:法律相談(月1~2回、予約制)
まずは無料相談を利用して、自分のケースで専門家のサポートが必要かどうかを判断してください。
遺言書作成を専門家に依頼する場合の選び方
遺言書の作成を専門家に依頼する場合、司法書士、行政書士、弁護士のいずれかに相談することになります。
それぞれの専門家には得意分野があり、自分の状況に合った専門家を選ぶことが重要です。ここでは、福岡市内で遺言書作成を依頼する際の専門家の選び方を解説します。
司法書士:遺言書作成と相続登記をセットで
司法書士は登記の専門家であり、不動産の名義変更(相続登記)を業務としています。遺言書作成と将来の相続登記をセットで依頼できるのが大きなメリットです。
司法書士に依頼するメリット
- 不動産が絡む相続に強い
- 遺言書作成から相続登記まで一貫して依頼できる
- 公証役場との調整もスムーズ
- 費用が比較的リーズナブル(5万円~10万円)
福岡市内の相談先
- 所在地:福岡市中央区渡辺通5丁目14-12
- 電話番号:092-722-4131
- 無料相談会:定期的に実施(要予約)
司法書士会では、相続や遺言に関する無料相談会を定期的に開催しています。まずは相談してから依頼を検討できます。
行政書士:遺言書の原案作成専門
行政書士は書類作成の専門家で、遺言書の原案作成を得意としています。公正証書遺言の原案を作成し、公証役場への同行サポートも行います。
行政書士に依頼するメリット
- 遺言書の文案作成に強い
- 公証役場への同行サポートあり
- 証人の手配も依頼できる
- 費用が比較的リーズナブル(5万円~8万円)
福岡市内の相談先
- 所在地:福岡市博多区博多駅東2丁目4-30
- 電話番号:092-641-2501
- 相談窓口:平日9時~17時(要予約)
行政書士は比較的気軽に相談できるため、初めて遺言書を作成する方にもおすすめです。
弁護士:紛争性がある場合・複雑な案件
弁護士は法律全般の専門家で、相続争いが予想される場合や、法的に複雑な案件に適しています。遺留分の調整や、相続人間の調整も含めて対応できます。
弁護士に依頼すべきケース
- 相続人間の関係が悪く、争いが予想される
- 遺留分の調整が必要
- 事業承継が絡む
- 過去に相続トラブルがあった
- 前妻・前夫との間に子どもがいる
費用と相談先
弁護士への依頼費用は10万円から20万円程度と高めですが、紛争予防の法的アドバイスが含まれます。
- 所在地:福岡市中央区渡辺通5丁目14-12
- 電話番号:092-741-6416
- 法律相談センター:平日・土曜日に相談対応(有料・要予約)
初回相談は30分5,500円程度です。まずは相談して、自分のケースに弁護士が必要かどうかを判断してください。
福岡市の無料相談窓口
専門家に依頼する前に、まずは無料相談を利用して情報収集することをおすすめします。福岡市には複数の無料相談窓口があります。
福岡市各区役所の法律相談
福岡市の各区役所では、弁護士による無料法律相談を実施しています。相続や遺言に関する相談も可能です。
- 相談時間:月1~2回、1人30分程度
- 予約方法:各区役所の市民相談室に電話予約
- 費用:無料
予約が必要なため、事前に各区役所に問い合わせてください。また30分しか時間がないため、事前にある程度話せる状態にしておくことも大事です。
福岡県弁護士会の無料相談
福岡県弁護士会では、定期的に無料相談会を実施しています。相続・遺言に特化した相談会もあるため、ホームページで日程を確認してください。
どの専門家を選ぶべきか迷ったら
まずは無料相談を利用して、複数の専門家の意見を聞いてみることをおすすめします。相談時に以下の点を確認してください。
- 自分のケースに対応できるか
- 費用の内訳と総額
- 手続きの流れと期間
- アフターフォローの有無
専門家との相性も重要です。話しやすく、分かりやすく説明してくれる専門家を選ぶことで、安心して遺言書作成を進められます。




お金はかかるかもしれませんが、子供や肉親が相続でもめるよりはよっぽどマシです。
【Q&A】福岡市の遺言書作成でよくある質問
遺言書作成でよく聞かれる質問をまとめました。簡単な疑問であればこちらを読んでいただければ解決できると思います。
- 遺言書は何歳から作れますか?
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満15歳以上であれば作成できます。ただし、判断能力が十分にある状態で作成することが重要です。認知症などで判断能力が低下すると、公正証書遺言の作成が難しくなります。元気なうちに準備しておくことをおすすめします。
- 夫婦で一緒に1通の遺言書を作ることはできますか?
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できません。民法では共同遺言を禁止しています。夫婦それぞれが別々に作成する必要があります。ただし、内容を互いに調整することは問題ありません。
- 一度作った遺言書を変更できますか?
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はい、いつでも変更・撤回できます。新しい遺言書を作成すれば、古い内容は自動的に無効になります。公正証書遺言も、新たに自筆証書遺言を作成すれば上書きされます。
- 遺言書で全財産を一人に相続させることはできますか?
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可能ですが、他の相続人には遺留分があります。遺留分とは、法律で保障された最低限の相続分のことです。遺留分を侵害すると、後で遺留分侵害額請求をされる可能性があります。専門家に相談して遺留分に配慮した内容にすることをおすすめします。
- 公正証書遺言の証人は誰に頼めばいいですか?
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未成年者、相続人、受遺者、その配偶者・直系血族は証人になれません。友人や知人に頼むこともできますが、遺言内容を知られることになります。司法書士や行政書士に依頼するのが確実で、1名1万円程度で引き受けてもらえます。
- 福岡市から引っ越した場合、遺言書は作り直す必要がありますか?
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作り直す必要はありません。遺言書は全国どこでも有効です。ただし、不動産の所在地が変わった場合や、相続人の状況が変わった場合は、内容を見直す方が良いでしょう。
まとめ|空き家トラブルを防ぐなら、今すぐ遺言書を
遺言書がないと、相続人全員での分割協議が必要になり、特に空き家が絡む場合は何年も手続きが進まないことがあります。福岡市内でも、遺言書がないために空き家が放置され、近隣トラブルや固定資産税の負担で家族関係が悪化したケースが数多く報告されています。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は費用がほとんどかかりませんが、形式不備のリスクがあります。公正証書遺言は5万円から10万円程度の費用がかかりますが、確実性が高く、相続発生後の手続きがスムーズです。
福岡市内には天神と博多に公証役場があり、予約すれば誰でも公正証書遺言を作成できます。専門家に依頼する場合は、司法書士や行政書士が費用対効果に優れています。紛争性がある場合は弁護士に相談してください。
遺言書は判断能力が十分にあるうちに作成する必要があります。「まだ早い」と先延ばしにせず、親が元気なうちに準備することが、将来の空き家トラブルを防ぎ、家族に負担をかけない最善の方法です。

